リメディアル教育が必要な学生が多数在籍する大学が増えている。そのため,日本リメディアル教育学会は,組織的な研究と具体的な対応策を共有し,具体的な成功事例の研究,啓蒙活動報告や社会への提言などを行う。

設立要旨

設立要旨

 近年,18歳人口の減少,大学入試の多様化などにより大学入学者選抜競争が緩和され,文系,理系をとわず大学生の基礎学力の低下が問題になっています。 その結果,大学の授業の理解が十分でない学生が多数在籍する大学が増加しています。

  また,新入生の基礎学力の状況を見ると,最近は同じ大学・学部・学科に入学する学生の間でもかなりの学力の差が生じているのが現状です。
大学での教育を成立させるためには,新入生に対する客観的な基礎学力の測定,そして学力が一定の水準に達しない場合のリメディアル教育が必要です。 しかし,従来これらの学生を対象とした調査・研究が十分に行われておらず,学力低下の急激な進行の中で, 対象とする学生の増加に各大学現場での支援が追いついていません。

  最近になって,教育関係の学会でリメディアル教育に関連した研究の発表が珍しくなくなりましたが,今後, リメディアル教育が必要な学生が多数在籍する大学が増えていることが予想されるため,組織的な研究と具体的な対応策を共有することが重要です。 先行研究によると,各分野とも支援体制を整え,学力に対応した教材を利用し,十分な学習時間を確保した上で学習を行うと, 明らかな成果が得られ学生のコンプレックスが自信につながるとの報告が出始めています。

  リメディアル教育は,対象とする学生が多いのですが,段階的な学力に対応した教材で対応することが可能です。 リメディアル教育の内容である中学校および高等学校では,カリキュラムが学習指導要領の縛りがあるため学習内容が共通化されています。 段階的に積み重ねている学習にはe-learningが効果的ですので,今後e-learningを使ったリメディアル教育が,さらに普及していくものと考えられます。 ただ,このような学生は,一般的に中・高であまり熱心に勉強してこなかったため,コンピューターリテラシーが低く, 自学習の習慣がない場合も多いことが推察されます。彼らに効果的に学力を付けさせるためには適切な教材だけでなく, 教室の確保やメンターの配置等において大学の管理部門との協力が不可欠です。

 そこで,具体的な成功事例の研究,啓蒙活動報告や社会への提言などを行う場としての学会活動の果たす役割が大きいものと考え, このたび,「日本リメディアル教育学会」を設立することにいたしました。このような趣旨に賛同され,この問題に関心を持たれる大学の教職員及び関係者の皆様には, 是非ともこの学会にご入会いただき,この分野における今後の発展に貢献くださるようお願いする次第です。

2005年3月
日本リメディアル教育学会発起人一同

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